変な帰り道

一昨日のことだ。
仕事を切り上げ、バイクにまたがり家路を急いでいた。目の前の信号が赤に変わった。信号待ちの後に発進しようとすると、信号を無視した歩行者が私の前を遮る。右折した途端に自転車が私の鼻先を遮って道を斜め横断していった。何だか危ないなぁと言う雰囲気は、家に帰り着くまで続いた。様々な障害が私の前に躍り出てきた。私は次に起こりそうな何かを予測しつつ、ずっと身構えながらライディングした。路側から飛び出してきたトラックが、私の目の前のバンにぶつかりそうになり、バンは突然大きく車線を変えた。ジョガーやスクーターや帰宅途中のサラリーマンや、猫やハト、ありとあらゆる何かが、私の行く手を遮ろうとする。
こういう日もたまにある。ずっと身構えつつ、ブレーキを握りしめながら運転。ようやく片側3車線のバイパスに入り、行く手が開けた。開けた行く手に赤いテールランプ。特徴的な丸い光が4つ並んでいる。スカイラインだが、近づくとGTRであることが分かった。円形に見えたテールランプは実はLEDを円形に配置している。少し離れてみるとそれぞれのLEDがつながって、円形の光に見えるわけだ。
GTRは無骨である。流麗ではない。なぜならGTRはスカイラインだから。GTRは流麗であってはならぬ。
純白のGTRはすぐに信号待ちの列に呑み込まれ、私の背後に消えた。私がその車を無骨と感じたのは、家まで後数百メートルに近づいた最後から2つ目の交差点の赤信号で、シルバーメタリックのNSXを見かけたからだ。バブルの時代にデザインされたこの車は,今になってみると実に美しい。NSXを見て、私はGTRが美しくないと気付いた。
変な一日だった。