NRがもたらしたもの

NRの小さな写真を初めて雑誌で見かけた時のことを今でも覚えている。ライダーさえも機械の一部に組み込もうとする小さなオートバイは衝撃的だった。
NRは結局ものにならず、少なくとも500ccのグランプリレースではまるで成果を挙げられなかった。結局750ccとなって耐久レースで成績を残し、市販もされている。
NRがものにならなかった理由は楕円ピストンの採用に無理があったからだろう。しかしながら、500CC4気筒で2サイクルエンジンと勝負するために、NRのあるべき姿はあれしかなかったのだろうと思う。どう考えてもうまく行きそうにない楕円ピストン8バルブエンジンは結局うまく廻らなかった。今ではレギュレーションの但し書きの中に生き残って居るのみである。しかしNRはピストン形状のみならず、十分進歩的なマシンだった。
パワーを得るために高回転を得ようとする試みは間違っていなかった。そのためにはショートストロークの設計にせざるを得ず、4気筒の制約のなかで楕円ピストンという発想だろう。
エンジンの嵩を可能な限りコンパクトに抑えるという点で、V型4気筒エンジンという配置はアドバンテージがあったはずだ。その後のRVFなどの活躍が証明している。
モノコックフレームはオートバイに応用するにはネガティブな要素が多すぎるのだろう。
小径タイヤはその後のトレンドとなった。倒立型のフロントフォークも同様だろう。
優れたエンジンと云うより、苦肉の策をホンダの技術者が何とかしようとした。そして、市販まで漕ぎ着けとりあえずハッピーエンドで良いじゃないかと言うのに、それを認めたがらないのがホンダのアレなのだろう。