過給器付きエンジン

低燃費の技術として、過給装置はどうなんだろう。
ハイブリッドによる省燃費技術の肝は、高負荷時のモーターによるアシストと、エネルギーの回生システムの組み合わせだ。逃れようのない弱点として、仕組みが複雑なこと。大きく重いバッテリを積むこと。巡航では省燃費にならないこと。そして、装置そのものの環境負荷
過給エンジンの場合、過給装置そのものは比較的コンパクトである。また、過給圧により燃焼室に導入する混合気量をコントロールすることでエンジンの排気量と圧縮比を事実上可変させることが可能である。過給システムは吸入と排気の両方をコントロールすることで様々な状況に対応し,常に最適な燃焼効率を目指すという意味で、技術的には興味深いのではないか。
ずいぶん昔に流行った技術である。私の認識も1988年のRA168Eで止まってしまっている。このエンジンについて、開発者の後藤治は「究極の高効率エンジン」と表現している。150リッターのガソリンで300キロのレースを走りきるというレギュレーションのもとで燃費が大きな開発テーマとなった。F1解剖講座(ISBN4-544-04037-X)によると、過給圧と出力・燃費の関係をみると、RA169Eは過給圧が高いほど(ルール上2.5バール)出力、燃費ともに向上するというのだ(106ページ、グラフ14)。その理由について後藤は「過給圧の低下につれてほとんど比例する形で出力も下がるのに対し、各部の摩擦などエンジンの機会損失は余り変わりませんから、エンジン全体としての機械効率が低くなってしまうことに主な理由があります。」と述べている。
二十年の時を経て、様々な材料技術やコントロール技術は遙かに向上しているに違いない。
エンジンを機械効率の面で突き詰めていくと、過給装置は効率を上げるための手段として有効であろう。それ以外のファクター、つまり自動車の原動機としての運用方法の問題を解決する手段として、エネルギー回生の簡便なデバイスの追加は有効となるだろう。