三方向矢印

通勤路の帰り道、最後のところで片側三車線の国道のバイパスを右折する。
帰宅前の最後の難所がその交差点だ。私はバイパスを直進してきて、交差点に近づいたら一番右側の車線に寄る。信号機は赤点灯で、主信号機の下に3つの矢印信号がある。大抵は直進と左折矢印が点灯している。交差点は4車線となり、私は右折ウインカーを点滅させて最も右よりの右折車線に入り、停止線手前に停車し、信号が変わるのを待つ。相当待たされる。
信号待ちそのものが、かなりスリリングである。ライダーは自分の左側を車がすり抜けていくのを好まない。私はブレーキペダルに足を乗せ、左足でバイクを支えている。直進車が運転を誤ると、私の左足を轢いていくかも知れない。少々落ち着かない気分である。
やがて、主信号機が黄色に変わり、同時に矢印信号が消える。私はローギアに踏み込んで構える。主信号機が赤に変わり同時に右折矢印信号が点灯する。私は発進し、交差点を右に横切って家に向かう片側一車線のバイパスに交差する道に入る。ここまで来れば自宅まで1分以内だ。
簡単そうに思われるかも知れないが、この信号を右折する度に私は勇気を試される。
もう一度おさらいするが、主信号が黄色になって直進・左折矢印信号が消えたら、私は交差点を横切る準備に入る。やがて主信号が赤になり右折矢印信号が点灯したら、私は交差点を横切らなくてはならない。対抗直進車が走ってくるのが見える。その運転手が見ている信号機は間違いなく赤で、直進矢印信号も消えているから、運転手は交差点に入らず、停止線で止まる筈である。しかし、時に直進する(これは信号無視という行為に該当する)運転手が居ることを私は知っている。関西圏では独特な信号の読みかえが罷り通っている。黄色は進め、赤は加速。変わりかけた信号機に待ったを掛けるような形で、信号無視する運転が容認されるケースが多い。つか、暢気に黄色信号で停止すると、追突されるか、「モタモタするな」と怒鳴られることがある。私は対抗直進車の運転手が停車してくれることを念じつつ、右折を開始する。ごく普通の交差点なら、このようなことはない。対抗直進車を見て、自分が安全と判断してから右折すればよい。三方向矢印の交差点で右折信号を待つ身は複雑だ。対向直進車が途切れ、今右折するのは大変安全だと思っても、右折矢印が出ていなければ信号無視ということになる。いっぽうで、右折矢印が出ていれば、これは危ないなぁと思いながらも交差点に突っ込まなくてはならない。
今日は大丈夫だった。明日は知らない。とにかく、とっても恐い。