巨大なキャンピングカーが抱える深刻な矛盾

夏休みの旅行中に、巨大なキャンピングカーを見かけた。
見た場所は小樽発舞鶴行きのフェリーの船倉の中。お盆休みが終わろうとしている頃だ。
そのフェリーはおそらくお盆の帰省のUターンラッシュに対応するため、トラックやトレーラーを乗せておらず、乗用車で埋まっていた。それらの小さなマイカーを威圧するようなぴかぴかのキャンピングカーが、私の車の数台後に停められていた。
心地よさそうなベッドを備えたキャンピングカーのオーナーが、果たしてこの混雑したフェリーの中で、このベッドよりも上等な部屋の鍵を手に入れたかどうか、いささか疑問だ。もしかすると二等の雑魚寝に甘んじているかも知れない。フェリーが出航した後は船倉に留まることは許されないから、豪華なキャンピングカーの寝室はムダになる。何という矛盾。しかし、さらに巨大な矛盾は、光り輝く白いボンネットの内側にある。
よく見ると、エンブレムはトヨタなのだ。V8 Hiluxのエンブレム。しかも左ハンドル。
トヨタが米国社の牙城を突き崩し、米国でトップに立つために投入した巨大なピックアップトラックを改造したキャンピングカーだったのだ。それにしても大きい。
日本でバブル絶頂の頃にデビューしたトヨタのV8が、米国のバブルの中でも蠢いていた。そして、図らずもアメリカンモーターカンパニーの息の根を止める手助けをし、やがて自らの首を絞めようとしている。何という矛盾。
ハイラックスV8改造逆輸入キャンピングカーの陰には僅かなガソリンを節約するために、大量の資源を使って開発されたハイブリッドカーが停まっている。トヨタは何のために車を売るのか。企業にとって、営業活動と社会貢献の折り合いをどう付けるつもりで居るのか。私には全く理解できなかった。